【サッカー/指導者/#3】DFB Trainer B Lizenz サッカー戦術の理解③-プレーの開始Spieleroeffnung-
Spieleroeffnungって?
具体的なSpieleroeffnungの戦術って?
Spieleroeffnung(センターバックへのパス)
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GK(1)-素早く攻撃のリスタートをするために、常にピッチ全体,相手と味方の位置や狙いを把握しながらボールをセットする。
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AV(2,5)-①できるだけワイドに高い位置を取る。②センターバックがボールを受けた際にサポートに入ることができるパスコースも考慮し、ポジショニング。→相手のAMFの位置を下げる
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6er(6)-①相手選手が1トップの場合は、敵STとMFのライン間にポジショニング。これにより相手STは6erへのパスコースを消すために中央にポジショニングせざるを得ず、TWからIVへのパスが成功しやすくなる。
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AMF(7,11)-①AVと同様ワイドに高い位置を取り、DFラインの背後へのけん制をする。②IVがボールを受けたときは、その場に留まらずに相手の6er、AMF、10erの三人の中間ポジションを取る(三角形の中心)
現代サッカーに求められるGK、DFの能力
【サッカー/指導者/#2】DFB Trainer B Lizenz サッカー戦術の理解②
前回の記事で整理したサッカーにおける4つの行動局面と3つのプレーエリアをより具体的に掘り下げる。
前回の記事を 読んでいない人は下記のリンクから前回の記事を一読することを勧める。
spieleroeffnung.hatenablog.com
4つの行動局面を3つのエリアそれぞれに当てはめると、以下のような戦術構成要素(die Taktikelemente)に分けることができる。
それぞれのエリアと行動局面で求められる判断基準をこのように各シーンの戦術構成要素として理解することは 、トレーニングを構築し指導をする上で、非常に有益である。また、試合を分析する上でもこの理解があることでどのシーンでうまく行っているのか、または改善が必要なのかを知ることができる。
ただし、1つのシーンは1つのシーンに過ぎないので、それぞれを切り離してはいけない。サッカーは90分の間、ハーフタイムを除いて常に断続的にプレーが継続され、攻撃、切り替え、守備、切り替えと常に局面が繋がっている。
つまり、何が言いたいのかというと、例えば、得点が少ないからと言って攻撃エリアでのシュート練習だけをやっても、必ずしも得点が増えるとは限らない。
例えば次のような状態がそうである。
- 得点が少ない
↑
- 攻撃の始まりがいつも相手ゴールから遠い
↑
- GKからのリスタート
↑
- 相手の攻撃がいつもシュートで終わる
↑
- ボールを失った後の切り替えが遅く、守備行動も悪い
つまり根本原因は守備や切り替えにある可能性もある。
あくまでも仮説だが、ここで強調したいのはサッカーの試合を分析、考察する上で、それぞれのシーンを分けて考えることはとても有益だが、サッカーの試合自体を分割することはできない。唯一分割して考えられるのはセットプレーだけである。
攻撃の戦術要素
さらに攻撃行動の戦術要素を詳しく掘り下げると以下のような図で表される。
1.最終(シュート)アクション
2.最終エリアでの三角形の構築
3.中央突破
4.中央ライン付近での三角形構築によるボール保持
5.サイドチェンジ
6.三角形構築による組み立ての準備
7.攻撃のスタート
8.カウンター
このようにDFB 指導者B級ライセンス養成コースでは攻撃戦術構成要素が分けられていた。またそれをさらに、個人・ペア・グループ・チーム戦術と細分化し、それぞれの規模で求められる戦術について整理、考察を行った。
上記の1−8の戦術要素をそれぞれ細かく考察すると非常に時間がかかるので、次回の記事では、最初の各エリアでの4局面ごとに掘り下げて書く。
また守備戦術の構成要素のついては別の記事で書く。
【サッカー/指導者/#1】DFB Trainer B Lizenz サッカー戦術の理解①
サッカーにおける戦術TaktikについてのDFB Trainer B Lizenz*1講義での認識を整理する。
サッカーの試合中、選手たちは主に4つの行動局面に直面し、その状況に応じて課題を打開、解決する必要がある。
その4つの行動局面とは、
- 自チームのボール保持中の攻撃行動 (Angriffsverhalten)
- ボールを失った後の切り替え行動 (Umschalten nach Ballverlust)
- 敵チームのボール保持中の守備行動 (Abwehrverhalten)
- ボールを奪った後の切り替え行動 (Umschalten nach Ballgewinn)
である。
この4つの局面が...1-2-3-4-1...と繰り返される。
またこの4つの局面がサッカーのフィールド上のどこで行われるかによって、戦術や戦略、選手の求められる課題や判断基準が異なる。
そこで、4局面における戦術理解をエリアごとに最も簡単に理解するためフィールド上を横に分けて3つのエリアを設定している。
そしてそのエリアごとに上記の4局面における戦術、戦略が検討されている。
3つのエリアとは
- 守備エリア(Abwehrdrittel)
- 中盤(Mittelfeld)
- 攻撃エリア(Angriffsdrittel)
である。
現在、グアルディオラが率いたチームがハーフスペースを利用しているとのことから5レーン理論などが流行っているが、これは選手が取るべきポジションとスペースを理解するために使われるものである。即ち、5レーン理論は、全く別のアプローチなのでこの3つのエリアでの戦術理解とは少し異なる。また3つのエリアでの戦術を全く理解せず、5レーン理論について理解することはできない。その理由については別の記事で書く。また5レーン理論について知りたい方は下記の記事を参照してほしい。
DFB Trainer B Lizenzでは、このようにエリアを分けて、各エリアでの4つの行動局面についてテーマを設定し、25人の受講生同士がそれぞれのテーマについてプレゼンテーション、映像分析、指導実践を行った。
各テーマごとの内容については別の記事でまとめる。
【個人的見解】
育成年代での基礎は基本的には上記の3つをまず理解し、U-15(C Jugend)以上の年代になった時にさらにスペースを細分化して理解するのが望ましいと個人的には考える。ドイツでもD Jung=U13では9人制,E Jung=U11の年代では7人制の試合を行っており、フィールドもその分小さい。
日本では一度5レーン理論などが流行ると本来手段であるハーフスペースを使うことが目的となっているチームがある。サッカーとは本来、相手より多くのゴールを決めることが目的であるにも関わらず、『ハーフスペースを使えっ!!』という怒号とともに選手がハーフスペースにゴールがあるかのごとく本来のゴールを見失う姿が想像される。
DFB 指導者養成コースB級の中で印象的だった話がある。
FVM*2の指導教官であるMarkus Schenk氏*3にドイツ国内でも現在非常に重要視されているサッカーにおける認知機能を高めるトレーニングの効果について聞いてみた。その時、Schenk氏もちろんその重要性を認めつつも、「サッカーの指導者としての仕事はサッカーを教えることであり、目新しいトレーニング方法や戦術ばかりをトレーニングしてサッカーの本質から離れてはいけない」と強調されていた。
近年サッカーの戦術を解説するブログや映像などが多く散見されるようになってきたが、サッカーの本質を理解する前に目新しい理論を吸収しようとするのは非常に危険だと考える。特に大手のメディアや雑誌が書き立てる記事の中には非常に詳細な戦術論が掻き立てられているが、日本サッカーの育成現場で若い指導者がそのような流れに流されないよう、この記事が少しでも役立って欲しい。そのために知識を出し惜しみすることなく全てを書きたい。