【サッカー/指導者/#3】DFB Trainer B Lizenz サッカー戦術の理解③-プレーの開始Spieleroeffnung-
まず前回、前々回では4局面と3つのエリアについて整理し、それぞれのエリアにおける4局面の戦術要素についてまとめた。
今回はDFB Trainer B Lizenz養成コースで取り上げられたテーマのうち攻撃行動の戦術のテーマについて。
Spieleroeffnungって?
まず、今日では多くのチームがGKからの短いパスを使った攻撃の組み立てをチームの一つの戦術としている。
ドイツではこのようなGKから味方選手へパス(長短のパスに関係なく)供給されることを攻撃の始まりSpieleroeffnung*1と言う。つまり、いつも攻撃の始まりはGKからフィールドプレーヤーへのパスということである。GKからゴールキック(Abstoß)だけでなく、中盤やDFの選手がボール保持中に前方や横の味方へのパスコースがなく、いわゆるハメられた状態の際に攻撃をやり直すためにGKに一度ボールをバックパスし攻撃をやり直す、この時のGKのプレーもSpieleroeffnungという。本ブログのタイトルにこのSpieleroeffnungという名前を付けたのも、サッカーの言葉で何か始まりを意味するような言葉を探していて、この名前を付けた。ちなみにドイツのサッカー戦術解説ブログとしてもとても有名なSpielverlagerungというブログがあるが、少しその影響もある。))
少し話が逸れたが、このSpieleroeffnungにいくつもの戦術が存在することは、ドイツで指導者として勉強し始めた際の一つの驚きであった。私自身が日本で指導していた時は、GKからのスタートはセンターバックへのパスか前方のFWへロングパスという2択の戦術しかもっていなかった。というより、そこまでGKからのスタートを重要視はしていなかった。しかし、GKからのスタートは非常に再現性が高く、ボールが止まった状態でスタートすることが多いため、セットプレーと似ている。そのことから、Spieleroeffnungの戦術バリエーションを持つことで、その次のエリアMittelfeldまたはAngriffsdrittelへ相手より優位な形で侵入していくことができる。
そのためDFBが発行する著書"Angriff mit System"にはこのSpieleroeffnungのバリエーションが多く存在している。現在ではこのSpieleroeffnungの重要性が認識されているが、最も日本でこのGKからのスタートが注目されたのは2008年以降のグアルディオラ率いるバルセロナがきっかけだろう。※グアルディオラ率いるチームは常にGKからのスタートで豊富な戦術を持っている。
具体的なSpieleroeffnungの戦術って?
具体的なSpieleroeffnungにおける戦術は、すでに述べている通り無数に存在する。また、選手は戦術を理解したとしても状況に応じてプレーを変える必要がある。しかしながら、基本の戦術を知ることで応用が生まれるのであるから、まずは今現在行われている基本の形を覚えることは非常に重要である。ここではSpieleroeffnungの例を紹介する。注意していただきたいのは、これはあくまでも一例であって DFB B級の指導者養成コースで取り扱っていたわけではない。
Spieleroeffnung(センターバックへのパス)
自チームのシステム:4-1-4-1(4-3-3)
相手チームのシステム:4-2-3-1(4-3-3)
目的:相手のSTとMFのライン及び守備網の分断を図り、相手より優位な状況でMittelfeldへ侵入、もしくはDFラインの背後を狙う。
各選手のポジションと役割
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GK(1)-素早く攻撃のリスタートをするために、常にピッチ全体,相手と味方の位置や狙いを把握しながらボールをセットする。
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AV(2,5)-①できるだけワイドに高い位置を取る。②センターバックがボールを受けた際にサポートに入ることができるパスコースも考慮し、ポジショニング。→相手のAMFの位置を下げる
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6er(6)-①相手選手が1トップの場合は、敵STとMFのライン間にポジショニング。これにより相手STは6erへのパスコースを消すために中央にポジショニングせざるを得ず、TWからIVへのパスが成功しやすくなる。
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AMF(7,11)-①AVと同様ワイドに高い位置を取り、DFラインの背後へのけん制をする。②IVがボールを受けたときは、その場に留まらずに相手の6er、AMF、10erの三人の中間ポジションを取る(三角形の中心)
現代サッカーに求められるGK、DFの能力
今日では多くのチームがTW(GK)からIVへパスを供給しGKとIVがゲームを組み立ての中核を担っているため、GK、IVは長身で対人に強いだけでなく高い足元の技術が求められるようになっている。特に現在ではノイヤーやテア・シュテーゲンのように足元の技術の高いGKが増えている。そのため、以前はGKは G Kトレーニングだけをやっていたが、現在ではフィールドプレーヤーと同様のトレーニングを行い、GKトレーニングは週に2−3回のみとGKトレーニングについても内容が変化してきている。